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好きなものを好きな分だけ

成人済腐。萩松/降新・安コ。ハピエン大好きなメリバ脳。字をもそもそ書きます。140字に要約する能力と検索避け文字列がしんどいため長文用にブログ作りました(一括metaタグ入れてあります)

『遊びに来たよ』

『萩松深夜のワンドロワンライ一本勝負』様に参加。
お題「鍋」(第67回 2024年1月13日出題)
DD萩松と萩原の祖父母(オリキャラ)、ハピエン。

 カセットコンロの上に大きな土鍋がひとつ。湯気と共にいい匂いが胃を刺激し、今か今かと待ち侘びる。
「そろそろいいかね。はいどうぞー!」
 祖母の声かけと共に蓋が開き、ぶわっと今晩の夕飯が顔を出す。たっぷりの野菜に椎茸、豆腐と肉。蓋をキッチンの作業台に置き、祖母が座ると祖父が「いただきます」を言う。
「いただきます!」
 俺と陣平ちゃんが口々に唱えてから、わっと箸を鍋に向かわせる。味ぽんの中に白菜、葱、人参を入れて、本命の肉を一口。ドライブデートで蓄積した疲労がじゅわあっと溶けていくようだ。
「うまー!!」
「うめえっす!!」
 炬燵でぬくまる陣平ちゃんも鍋の美味しさに目を輝かせる。
「たくさん食べり」
「おばあちゃんもね」
「そうかい。でもね、大学生活の貴重な休みにじじばばんちに来てくれたんだ、まずは孫たちをもてなすのは当然じゃないの」
 豚肉をはふはふ頬張る陣平ちゃんを横目に、祖母の器に少ししか野菜が入っていないことを目で訴えると、ふふっと微笑みながら鶏肉をよそった。炬燵の向かいの祖父の器は見えないが、陣平ちゃんの器に「これも食え」と更に豚肉を投入している。悔しいので「鶏も美味しいよ」とまだ自分も賞味していない鶏肉を入れてあげた。
「タレが見えねぇ!」
「アツアツだよ、食べなよ」
「自分で取るから!」
 更に葱を入れてあげると、炬燵の中で脚をぶつけられた。カラカラ笑いながら俺も鍋へと集中する。
 昨日の金曜の夜にテレビを観ていると、群馬が映し出されていた。温泉や食事、神社仏閣が紹介されていた。群馬は俺の母方の祖父母の家があるので馴染みがある。一緒に観ていた陣平ちゃんも乗り気になったところでドライブデートすることにした。夜のうちに実家に連絡し、朝イチで実家に置かせてもらっている愛車を簡単に整備して東京から群馬まで走らせた。都内から県外へ下道をビュンビュン走らせ、山道をグングン登り、テレビで紹介されていた冬名神社を参拝した。その後も山道の走りを堪能して、チェーン店ではなく地域の個人店を狙って食事をし、「群馬といったら豚肉ー!」とテンション高く地元の肉屋で肉のセットを買い、神社を出る時に冬名に住む母方の祖父母に連絡したとおり寄ったところ、鍋の用意が進んでいた。ちょっと顔を見せる予定だけだったが、「鶏肉しかなくて申し訳ないんだけど」と苦笑いする祖母に「あっ、豚肉ありますよ」と陣平ちゃんがフォローして、そのまま鍋パーティーへと突入した。なんでも「じじばばを悲しませるもんじゃねえ」とのこと。親父さんの一件で祖父母宅に預けられていたことがある分、陣平ちゃんはその世代を大事にする。
「陣平くん、食べてる?」
「食べてます、美味しいです」
「よかったよかった。研ちゃん、お父さんやお母さん、お姉ちゃんは元気?」
「元気元気。経営はコケちまったけど技術は衰えてねぇみてぇで、再就職先にも何人か常連さんが通ってくれてるのもあって何とかやってるっぽい。母さんは事務職パートに滑り込んだーと言ってたけど、運良く正社員になれてバリバリやってる。自営で取ってた簿記が役立ったから資格は取っときなさいって言われた。姉ちゃんは元気にバイク乗ってあちこち行ってるみてぇだよ」
 姉ちゃんだけテキトーなのはその位しか知らないから仕方ない。一足先に家を出て、更に俺も家を出ていると姉弟間は疎遠気味になる。たまにバイクで出掛けた先の景色をメールで自慢されるのが精々だ。そうだ、俺もあとで冬名神社と、この鍋自慢しとこ。
「そうかいそうかい。あのときは全然役に立てなくて悪かったねぇ……」
「なのにこうやって顔見せに来てくれるんだ、ありがてぇこった」
「何言ってんの、大学進学祝いとかいろいろしてくれたじゃん。それに孫が友達連れて遊びにくるなんて普通だぜ?」
「そうだねぇ、いい子に育った。車で来たんだし、野菜いっぱい持って帰んなね」
「ありがとー!」
「お父さんとお母さんの分と、あと二人分でいいかねぇ」
 にこにこ笑う祖母に疑問を持つことなく頷く。「いいんですか」と白菜を飲み込んだあと慌てる陣平ちゃんに、祖父もうんうんと頷く。
「研二と仲良くしてくれてるんだ、受け取ってくれ」
「研二をよろしくねぇ」
 車の運転の練習で群馬にはよく足を伸ばし、祖父母宅にはその度に顔を出していたが、いつの間にこんなに陣平ちゃん気に入られていたんだろう。ポイポイ豚肉がまた祖父の手で器に投入されてるのを見て、俺も椎茸と白滝をいれてあげる。
「研ちゃんは可愛いねぇ」
 くすくす笑いながら祖母が肉をごそっと俺の器によそった。反論する前に「言われてやんの」と陣平ちゃんがニヤリと笑ったから、さっきのお返しに炬燵の中で脚をぶつけた。
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プロフィール

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加島
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自己紹介:
・成人済腐
・萩松/降新・安コ
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・140字に要約する能力と検索避け文字列がしんどいため長文用にブログ作りました(一括metaタグ入れてあります)

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