http://kashima.kurofuku.com/%E8%90%A9%E6%9D%BE/%E3%80%8E%E5%A0%82%E3%80%85%E3%81%9F%E3%82%8B%E4%BA%8B%E5%AE%9F%E3%81%AF%E5%99%82%E3%81%AE%E4%BE%A1%E5%80%A4%E3%81%AA%E3%81%97%E3%80%8F『堂々たる事実は噂の価値なし』
『萩松深夜のワンドロワンライ一本勝負』様に参加。
お題「噂」(第71回 2024年2月10日出題)
K学萩松とK学メンバー。ハピエン。
ねぇ知ってる? この前の飲み会であの子たち付き合い始めたらしいよ?
マジで? 不健全性的行為の疑いで詳しい話聞かないとね!
「なぁヒロ、二十歳過ぎても性的行為に責任取れないものかな」
「ただの恋バナだよ、あれは」
「ゼロって堅物すぎねぇ?」
腕を組んで、きゃっきゃと笑い合う女子を見る僕に、ヒロがいつもの笑顔で答え、松田が呆れた顔を向けた。
「真面目と言ってほしいね」
「へぇへぇ、真面目なフルヤレイ君がどんな恋の噂を流されるのか今から楽しみだぜ」
「あっ、それは俺も楽しみ」
にこにこっ、と萩原が同調する。なー、と松田が軽く振り返って萩原と目を合わせて笑い合う。恋人ができてもこいつらには紹介しない。今決めた。この決意を覆すほど紹介したい人間に出逢えたら奇跡だろう。
ただ、『女医好きなの?』だとか『年上好きなの?』だとか、エレーナ先生に関する噂をわざわざ聞いてくる輩はいなかった。少なくとも僕に直接聞いてきた人間はひとりもいない。警察学校に入ってから松田にしか告げていない事実に鑑みると、おちゃらけていても松田は口が堅いタイプなのかもしれない。
そんな松田がきょろりと「そういえば」と班長を見た。
「班長の彼女持ちって噂の真偽は聞かれたことねぇな」
「聞かれても事実だと返しとけ」
「オレ、『あーダメダメ、伊達君は彼女いるもん。狙うだけムダ』って話ならちょろっと耳にしたことあるよ」
「断言されて噂のウの字にもなってねぇな」
「班長の人徳かねぇ」
「萩原や松田についても聞かれたことないや。ゼロの恋人の有無は聞かれたことあるけど」
それを言うなら僕だって『萩原君の彼女って……』『松田君って付き合ってる人いるのかな……』などと聞かれたことはない。多分班長も尋ねられたことはないだろう。松田に体重をかけ、ゆらゆら揺れる萩原はくすりと笑う。
「聞かれたらちゃんと答えるから『本人たちに聞いて』って答えとけばいいぜ?」
「胸張って教えてやるぜ」
ぐりぐりと萩原の頬に頭を押し付ける松田の落ち着いた隙を見て、頬擦りを返す萩原に嘆息する。『本人たち』か。それもそうだな。萩原の席で萩原の脚の間に座ってリラックスし、バックハグされる松田の両手を大きく覆って指遊びしている人間の関係性をわざわざ聞く人間がいるはずもないだろう。かく言う僕も聞く気の起こらない人間のひとりだった。
それでも謎なのは、萩原の合コン勧誘の引く手数多な理由だった。萩原が出席すればこの調子の松田も必ず一緒にいるのだから。
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