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好きなものを好きな分だけ

成人済腐。萩松/降新・安コ。ハピエン大好きなメリバ脳。字をもそもそ書きます。140字に要約する能力と検索避け文字列がしんどいため長文用にブログ作りました(一括metaタグ入れてあります)

『好きな子の名前』

『萩松深夜のワンドロワンライ一本勝負』様(X)よりお題をお借りました。
お題「車」(第74回 2024年3月2日出題)
DD萩松とオリキャラ。オリキャラ視点。ハピエン。



「萩原君ってどんな子が好き?」
 ガヤガヤと賑やかな講義の始まる前の教室で、女子数名が萩原を取り囲んだ。萩原研二はモテる男だ。大学で知り合った仲だが、ここまで黄色い声を掛けられ続ける同性は初めてだった。同じく大学で知り合った松田陣平も整った顔立ちから人気はあるが、取り付く島もないため萩原のように囲まれる回数は少なかった。
 今回の問いかけは真面目な告白及びそれに準ずる探りというよりは、軽い世間話の範疇だろう。ノートやペンケースを用意する手を止め、萩原は女子たちに笑いかけた。
「俺は松田が好き」
 女子の視線が萩原の隣に向けられた。絶賛腕時計を分解中の松田は「おー」と顔を上げずに相槌を打つ。
「俺も好きだぜ」
 忙しなく、そして穴があきそうな程ふたりを見比べる女子の視線がじらじら熱い。「直りそう?」「ああ」とやりとりする萩原と松田との温度差に気づいていなさそうな安藤がカラカラッと笑った。
「それ、マツダの車が好きって話だろ?」
「あっ、車……?」
「車のマツダ?」
「ああ、愛車はマツダだよん」
「萩原んち車の工場でさ。高校からの定番ネタだよな!」
「……えっ、高校から……?」
 ほぼ全員が安心し、自分にも脈があると見た女子が穏やかな目付きになったが、約一名、『高校からの定番ネタ』に引っ掛かりを覚えたらしい女子が改めて萩原と松田を見遣る。きちんと見れば、大多数に向ける眼差しと松田ひとりに向ける眼差しは種類が違う。コミュニケーション能力に長けている萩原ならそれを隠すことも可能なはずなのに敢えてしないで、好きなタイプの回答に堂々と『松田』と答え続けている真実、更にそれを否定するどころか肯定する松田の真意に気づいたらしく、小さく二度頷いて彼女は仲間たちの会話へと溶けていった。
「ほい、井上。直ったぜ」
「速いな」
「ふん、こんなの」
「三分あれば十分だ」
 松田の台詞を萩原が引き継ぐ。口癖を奪われても怒らない様子を見るに今日は機嫌がいいらしい。教授がくる前に机の上の工具を片付けようと急ぐ松田を萩原が手伝う。安藤は松田の鞄からノートを引っ張り出してあげていた。俺は松田のおかげで調子の良くなった腕時計を装着する。止まっていたため開始時刻はわからないが三分程度で直してもらえた。天才とは身近にいるものだ。
「なあ、萩原の好きなマツダ、久々に乗せてくれよ」
「後ろの席でいいならいいぜ。助手席は陣平ちゃんの定位置だからな」
「じゃあ、あそこ、昨日テレビで観たラーメン屋行こうぜ! あら炊きスープ気になってんだよな」
「井上も行くだろ?」
「ああ。腕時計のお礼に奢る、松田だけな」
「やりィ!」
 散った女子たちが聞いたら羨ましがるであろうドライブのお誘いに乗る。
 好きだとか一番だとか。それはもう萩原と松田の中では揺るぎない事実で、牽制の仕方もいなし方も手慣れたもので、既に日常の一部なのだ。全力で今を生きる彼らの人生に友情で繋がっているのは、こそばゆくも心地良かった。
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プロフィール

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・成人済腐
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