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好きなものを好きな分だけ

成人済腐。萩松/降新・安コ。ハピエン大好きなメリバ脳。字をもそもそ書きます。140字に要約する能力と検索避け文字列がしんどいため長文用にブログ作りました(一括metaタグ入れてあります)

『ねこ、じらす』

猫の日萩松。Dom/Sub軸、新婚、朝の身支度。ハピエン。
・鈴付き首輪
・ネックウォーマー、アームウォーマー、レッグウォーマーによる猫風コーデ
・上記による概念拘束
・(攻めの)ソックスガーター
・指輪交換

これと同じ世界軸です。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20722811




「陣平ちゃん、〝脱いで〟」
 一般的なコマンドの〝Strip〟を発する。陣平ちゃんは恥じらいつつ、でも嬉しそうに腰紐を解き、ふわもこのフリースを肩から滑らせた。指先からゆっくり、足元のラグに落とす。
「続けて」
 ベッドに腰掛ける俺にこくんと頷くと、ボタンを外してパジャマの上着も脱ぎ、黒い長袖のインナーだけになる。
 今は朝のプレイの時間だ。朝食も済ませ、歯も磨き、スキンケアも施した。一緒に住み始めた俺たちは、着替える作業をプレイに置き換え、朝から心を満たすようになっていた。エアコンを効かせた寝室で正味一時間はかけているだろう。苦手な朝も陣平ちゃんとのプレイのためなら早起きできる。
 陣平ちゃんはほんの少しの躊躇いを持って、腰からパジャマのズボンも下ろした。膝を折ってラグから脱いだパジャマを退かし、黒いボクサーパンツだけとなった下半身を寒さに身震いさせ、スッとまっすぐ俺の正面に立つ。褒めて褒めてと期待が顔に出ている。
「〝いい子〟だね。ああ……いい身体だね……陣平ちゃんの身体は本当にすごい。〝回って〟」
 パンツ、インナー、就寝用の首輪。それしか身につけていない、程良い筋肉質の身体を目で味わう。コマンドの通りに陣平ちゃんは右回りにゆっくり身体を回転させる。腰付き最高。うなじもいい。パンツから伸びる太もものなんと魅惑的なことか。
「〝いい子〟、〝座って〟」
 回り終わった陣平ちゃんを褒めて、座らせる。ベッドのすぐ下に敷いたラグは陣平ちゃんのために用意したものだ。腰掛けた俺の足元にぺたんと座った陣平ちゃんの髪を撫でながらまた褒める。
「〝お手〟」
 保温性に優れたインナーを肘まで捲り上げ、乾燥予防にボディクリームを伸ばしていく。長掌筋が服の下に隠れてしまうのがもったいなくて、何回も何回もスリスリと筋を撫であげる。愛するDomが自身の身体を愛してくれていることに、陣平ちゃんのSubの本能が嬉しさに打ち震えているのがよくわかった。
 両手とも塗り終えたら〝いい子〟と褒め、立ち上がって予め用意していた黒いシャツを着せていく。ボタンを一つひとつ留めるのも好きな作業だ。コマンドを発しつつ世話を焼き、黒い靴下とメンズタイツも履かせて、下準備を終える。
「今日は寒いから首を温めるよ」
「首?」
 ネックウォーマー、アームウォーマー、レッグウォーマー。手に取ったウォーマー類を陣平ちゃんはくりくりの目で観察する。肌に当たる内側は通気性を重視した綿製、外側は黒いふわふわとした少し毛足のあるファーが特徴的だ。色は全て黒で統一してある。促すとふわふわの毛並みを撫でて「気持ちいい」と呟いた。
「〝お手〟」
 もう一度差し出された右手に、シャツの上からゆっくりアームウォーマーを嵌めていく。事務用品ではなくファッション性が高く、手首のみ温める短いタイプだ。左手も同じように嵌めて、両手首がふわふわになる。
「ん……」
 陣平ちゃんの脳をぞくぞく刺激しているのだろう。言語化できない心地良さからか、はふ、と吐息が漏れた。
 その様子ににっこり笑いながら俺も床に失礼し、向かい合わせに座る。右脚を持ち上げてレッグウォーマーを履かせる。こちらも足首のみを温めるタイプだ。脚の向こうにうっとりとした顔が見えた。陣平ちゃんは可愛がられることを何よりも悦ぶ。その相手は俺が最上に位置するのだ。優越感に浸りながら、左脚にも同様にレッグウォーマーを嵌めた。
「ん……萩……。……ハギ……」
「うん」
「これ……なあ、もしかして……」
 何かに気づいた陣平ちゃんに微笑み、首肯する。
「そう。繋いじゃった。陣平ちゃん、繋がれちゃったね。お外行くのにね」
 アームウォーマーとレッグウォーマーが、鎖でこそ繋がれていないが手枷と足枷だというのがわかったのだろう。枷というにはあまりにもソフトであるが、俺がそういう意図で装着し、陣平ちゃんがそうだと認識したのならこれは立派な拘束具なのだ。そしてこれから何時間も拘束具を着けて外で過ごす。人からはわからない、秘密の拘束。陣平ちゃんがみるみる倒錯的な隷属欲に満たされていくのがわかった。とろけ始めた顔が可愛くてキスしたくなったが、そうすると一日中ベッドの上の住民となりそうなのでグッと堪えた。
「さ、陣平ちゃん、首輪着けるよ」
 首を撫で、就寝用の布製の首輪を外し、襟を汚さないよう気をつけながら軽くベビーパウダーをはたく。両手で均一にならして、ネックウォーマーを回す。うなじ側でスナップボタンを留めて、本日の主役、首輪を手に取る。普段は黒革の首輪だが、今日はちょっと違う。青色の革に、銀色の鑑札が縫い留められ、金色の鈴が揺れる。
「首輪……!」
「そう。陣平ちゃん、今日は猫になろっか」
 ぱあっと花を飛ばす陣平ちゃんが元気に顎を上げる。アームウォーマーとレッグウォーマー、そして今しがた着けたネックウォーマーは猫を表しているのである。下着から何まで黒で揃えたのは黒猫をイメージしているためだ。
 黒い毛足の上に首輪を嵌める。カチリと首輪の留め具のしまった音に陣平ちゃんがピクンと震えた。Sub特性が強く、首輪に執着する陣平ちゃんは、過去に首輪装着だけでSub spaceに入ってしまったことがあった分、今日は大丈夫だろうかと心配していたが、「萩、ハギ!」と元気に首輪をさわりながら自慢してきたのでほっと安心した。
 全身黒で統一した中、青い首輪と金色の鈴が目立っている。
「鈴!」
「鈴だよ」
「へへへ」
 にこにこする陣平ちゃんに黒のカーディガン、黒のスラックスを着せていく。これでほぼ陣平ちゃんの着替えは完了だ。アームウォーマーとレッグウォーマーはほとんど見えないが、俺と陣平ちゃんは甘い拘束具を身につけていることを知っているのだ。
「わかった! 今日、猫の日か!!」
「ご名答。黒猫陣平ちゃん、気分はどう?」
「いい! すっげー嬉しい!」
「陣平ちゃんが喜んでくれて俺も嬉しい。暑くなったら無理せず脱ぐんだよ」
 俺の注意を聞いているのか怪しい陣平ちゃんが、上機嫌にくるくる回っても鈴は鳴らない。動く度に鳴っていたら生活に支障が出てしまうため、敢えて鳴らない鈴を用意したのだ。
「なあ、自慢してもいいか?」
「いいよ。帰り、いつもの黒猫喫茶寄ろっか」
「ああ、寄ろうぜ!」
 黒猫喫茶は俺たちの行きつけの店だ。店の名前はマスターが黒猫が好きなだけで猫カフェではない。Sub席があり、カレーライスとホットミルクが陣平ちゃんの定番メニューだ。鳴らない鈴の首輪は黒猫喫茶のウェイトレスさんが常に着けていて、DomやSubのアイテムを取り扱っている店は彼女に教えてもらった。世間でのそつのない身の振り方も喫茶店で学んだものだ。陣平ちゃんは先輩Subをキラキラした目で見ていた。彼女の生き方、そして純粋に鈴付きの首輪に惹かれたのだろう。俺も陣平ちゃんを喜ばせたくて、今日この日のために黒猫コーデ一式としてコツコツ揃えたのだ。きっとウェイトレスさんも褒めてくれるだろう。
「にゃあ」
「おっと! まだだめ」
 首を傾げて猫の鳴き声をあげる陣平ちゃんの唇を、むに、と人差し指で制する。ここまで誂えておきながら、と若干不服そうに眉を吊り上げた。
「猫になるのは夜になってから」
「夜?」
「そう、夜。研二君、猫耳カチューシャも用意してあります」
 夜。ともう一度呟く。
「昼間は鳴いちゃだめ。陣平ちゃん、猫だってバレないよう、人間の振りするんだよ、猫被れる?」
「……できる」
 目敏い者は首輪の色の違いや鈴に気づくだろう。聡い者はファーのネックウォーマーから猫のコーディネートに気づくだろう。その他人の気づきに陣平ちゃんが敏感になればなるほど、恥じらいがSubの悦びとなり、拘束具が俺との夜の時間を想起させるだろう。軽く想像したらしい陣平ちゃんは、興奮を目の奥に宿して、いじらしく頷いた。
 期待を隠すかのように、陣平ちゃんはそそくさと首輪と鈴をいじりながらクローゼットへ向かった。それでいい、本格的な猫ちゃんプレイは朝からするものではないのだ。焦れる背中が愛おしい。
「お揃いで黒な」
「ありがと」
 ファッションにあまり興味がなく、Sub特性の世話を焼きたいという欲もほぼ持ち合わせていない陣平ちゃんだが、ソックスガーターは特別らしい。一度履いたら、ずっと着けてほしい、着けさせてほしいとおねだりされて、承諾したのは高校時代だ。
 俺もパジャマのズボンを脱いでそわそわと待っていると、黒のソックスガーターと黒の靴下を手にして、俺の足元に座った。靴下を履くと、慣れた手つきで俺のふくらはぎにガーターを装着する。左右対称かどうか見て、俺の爪先から頭の天辺まで視線を動かした。往復した先のソックスガーターに指を添えて、そっと口付ける。要は性癖なのだ。ゆるく興奮する陣平ちゃんの好きにさせる。
「よし、終わり」
「ありがとう。〝いい子〟だ、上手に出来たね」
 耳の後ろを撫でさすり、お礼を言う。悦ぶ陣平ちゃんはそのままに、俺は外着のスラックスを履いて自分の身支度を整えていく。陣平ちゃんの黒猫コーデを引き立たせるため、俺はベージュにオフホワイトのカラーリングだ。寒がりな陣平ちゃんにダウンコートを着せて、アクセサリーボックスから指輪を取り出す。
「陣平ちゃん」
 ラグに座っている陣平ちゃんにあわせて俺も座る。
「萩」
 まずは陣平ちゃんが俺の左手を取り、くにくにと手を慈しんだあと指輪を薬指へ嵌めた。俺も左手を取ると、両手で温めるように数秒包んで、薬指にそっと嵌める。薬指の爪にキスを落として、更に手の甲にキスをする。
 目を合わせて無言でふたり、キスをする。
 厳かで甘い、大事な毎朝の儀式だ。
 夜、俺が指輪を外しているのは、愛し合う際、俺の指が好きな陣平ちゃんが気兼ねなく指を愛せるようにだ。絡めたり舐めたり、大変慈しんでくれる。その理屈でいえば陣平ちゃんの指輪は外さなくてもいいのだが、汚れ防止のために昨日は外していた。もちろんシーツの上の指輪の煌めきを楽しみたいときは嵌めたまま夜を過ごす。
 唇を離して、可愛い黒猫ちゃんの首輪を一撫でして鈴を揺らす。
「よっし、行くか!」
「おぅ!」
 あとは各々鞄を手にして速歩で玄関に向かう。
「いってきまーす」
「いってきます!」
 見送る人間はいない。十八歳の成人と同時に同性パートナーシップ制度の申請許可を受け、指輪を交換して、二十歳の挙式を目標にしている俺たちは、ふたり同時にいざ大学へ。学生結婚して後ろめたいことなんて何もない。国立大学一発合格、学費は奨学金、生活費はふたりのバイト代から賄っている。援助してくれた両家には頭が上がらない。
 二月二十二日、猫の日。鍵をかけて、待っていた陣平ちゃんと歩き出す。「萩」、向けられた笑顔は朝日より眩しい。「陣平ちゃん」と返事をする。
 俺の可愛いSubの陣平ちゃんは、首輪の下と服の下で、手足に黒い毛を纏って猫になっている。首輪の先で音の出ない鈴が揺れる度、また手足の拘束具を意識する度、陣平ちゃんは昼の間ずっと、夜には猫になるのだとじわじわ身を焦がしていく。そんな陣平ちゃんを俺は隣で見たり、遠くで想像するのだ。期待に喉が鳴るは仕方のないこと。
 そう。猫耳としっぽを生やしてもらい、にゃあにゃあ鳴いてもらうのは、夜の帳が下りてから。
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