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好きなものを好きな分だけ

成人済腐。萩松/降新・安コ。ハピエン大好きなメリバ脳。字をもそもそ書きます。140字に要約する能力と検索避け文字列がしんどいため長文用にブログ作りました(一括metaタグ入れてあります)

『サンバとパラパラで祝宴を』

『萩松深夜のワンドロワンライ一本勝負』様より。
お題「音楽」(第56回 2023年10月21日出題)
生存if、同期たち(萩松、伊ナタ、降新含)、ハピエン。ちぢませが説明なく存在してます。

 オーレーオーレー、とコンポから軽快なリズムが流れる。
『上様サ・ン・バー!』
「ここで決めないでいつ決める! そこ! 笑顔絶やすな! なんとなく移動するな、見えないラインをきちんと移動しろ! 指先まで意識!」
 一日貸し切った体育館で、同期数十名をまとめあげ、パンパンと手を叩いて鼓舞する降谷の額には汗が薄く滲んでいる。
 同期の伊達の結婚披露宴まで二ヶ月をきっている。自身の事故を皮切りに、恋人のナタリーの後追い未遂、連絡を受けて日本に駆けつける途中でのナタリーの両親の事故と連鎖的に怪我人が出て、全員の快復、改めての両家親族への挨拶により、予定より大幅に遅れたが、ようやく結婚式を挙げられることになった。式は先にナタリーの故郷アメリカで行い、披露宴は日本で執り行うことになっている。無事夫婦となれるめでたき報告に警察学校時代の同期たちは喜び勇み、さっそく余興をしようと松田が『上様サンバ』を発案した。「まっかされてー!」と顔の広い萩原に任せた結果、上様サンバの振り付け動画や腰元衣装など各々得意分野を発揮し本格的な物が集まってしまい、上様サンバのライブなのか、伊達夫妻の披露宴なのかわからない規模となっている。ちなみに同期に留まり先輩や後輩がこの団体に入っていないのは、降谷や諸伏等への配慮である。
「右、左、右! 左、右、左!」
「う、このステップ簡単そうに見えてめちゃくちゃ難しい……!」
「さては貴様、動画見て練習してないな!? これでよく警察が務まるな!」
「まあまあゼロ、職業まで否定しなくても」
「そうだよ降谷ちゃん、せめて『班長の同期』にしてあげなよ」
 檄を飛ばす降谷の意思を汲み、諸伏と萩原がフォローの言葉をかけながら現役警察官の様子を見て回り、できていないところを指導していく。
「コラ、松田! 自分が完璧だからだってサボるな! ヒロたちを見習って、できてないやつのフォローに回れ!」
「はア? 俺が教えてたらゼロ怒ったじゃねぇか、『擬音で指導するな』とかなんとか」
「その通りだろう」
「俺はこいつらの指導してるからよ、なっ、こはぎ、こまつ」
 体育館の端で、萩原のちぢませ……通称こはぎ、同じく松田のちぢませ、通称こまつが、うりっとポーズを決める。成猫サイズのちぢませたちがきゃらきゃらと踊る姿は見ていてとても微笑ましい。降谷の作ったフォーメーションにもちぢませたちは配置されており、人間の同期たちを先導する予定である。微笑ましいだけで済ませず、きっちり踊らせるつもりの降谷は「むぅ……」と怯み、それ以上松田を叱ることはやめにした。もっと指導すべき人間がいるのは確かなのである。
「よし、もう一度最初から通すか! 全員配置につけ! 松田もおちびたちもだ! よろしく、ちびれい」
 同期たちをスタート地点に待機させ、降谷が合図を送る。コンポ近くでちょこちょこステップを踏んでいた降谷のちぢませ……通称ちびれいがピシッと敬礼をして、再生ボタンを押した。音楽が流れ、近くで諸伏や新一のちぢませもリズムを取り出す。ちなみに公安の降谷と諸伏は披露宴では踊らず、今日のように後方支援に回る予定だ。降谷の婚約者といえども新一はそもそも呼ばれていないので、ちぢませだけ今日降谷の手伝いに来ている。
「あーッ!! あっ、あっ、あっ!」
 そこに突然大声を上げ、場を乱す者がいた。
「うわびっくりした」
「な、何だ、萩原」
 松田と並んで悪ガキと言われてもこういう場では和を尊ぶ萩原の大声に何だ何だと周りも目線を送る。
「あ、悪ィ悪ィ。個人的なハナシ。……うわー、めっちゃ嬉しー!」
「どうした、萩」
 ポケットに入れていたらしいスマホ画面録画を見て萩原は喜び続ける。
「陣平ちゃん、上様サンバカフェ当たったよ!!」
「マジかよ!  えっ、ダメ元で前に申し込んでたやつ?」
「そう!」
「ファンクラブにも何も入ってなくて無理だと思ってたのに!?」
「申し込んでみるもんだね!」
「おちびたちの分もあるよな!?」
「モチのローン、こまつとこはぎの分もあるよ!」
「でかした! 萩、サンキュ! 上様ありがとう!」
 スマホの当選画面を見せてはしゃぐ萩原と松田に、周りの同期たちも羨む声をかける。上様サンバカフェとは、上様サンバの人気っぷりに商機を見出した商人たちにより、上様サンバの歌詞に沿ったフードメニューを、店舗や人数、期間を限定して提供する飲食店のことである。上様サンバに限らず、昨今、様々なアニメ、キャラクターがコラボカフェを開いている。
 練習が中断し、深く溜め息を吐く降谷に、諸伏たちが慰めの手を置いた。ちなみに諸伏は知らないところだが、実は降谷も申し込んでいた。結果はまだ見ていないが、萩原と松田、こはぎとこまつの四人席が埋まったとなると、何となく当たった気がしなかった。ポチリと音楽の停止ボタンを押し、意識を向けさせて降谷が声をかける。
「おーい、そろそろ再開するぞー」
「ごっめーん!」
「うぉお、テンション上がってきた! 一曲踊ってもいいか!?」
「は!?」
 松田の突然の申し出に降谷が素っ頓狂な声を上げる。上様サンバだってまだ完成していないというのに。松田は人より器用な指でタタタとスマホを操作する。
 キュイーン、ギャギャギャアーン!
『恋は刺激、衝撃、ミステリー!』
 スマホから流れた音声に、そこにいた全員が雷に打たれたように体を大きく揺らし、手足を動かし始める。
「こ、この歌はっ!」
「くっ、何故だ、踊れる!」
 同期たちは自分の中の潜在能力に戦きつつパラパラのステップを踏む。ちぢませたちも例外なく踊っている。程よく脱力した動きで踊りながら、「俺たちの課題曲だからな」と松田は誇らしげにニッと笑う。
「ヤバ、萩原のパラパラの練度がハンパねぇ!」
「よく見ろ、ちびしんのドヤ顔! あの表情、只者じゃねぇ!」
 遊び人と言っては怒られるが、パラパラの脱力感と緊張感を意のままにする萩原、真顔でピッピッと手足を曲げ伸ばすちびしん。萩原が『本場』と表現されるのであれば、ちびしんは『本家』といったところか。両者の姿にそれぞれカリスマ性を見出し、同じくパラパラを踊り続けながら降谷は諸伏を見ずに語りかける。
「ヒロ、上様サンバよりこっちのほうがいいんじゃないだろうか?」
「上様サンバを一番だけにして、このパラパラの一番を編成するほうが楽しいと思う」
「なるほど」
 真面目な表情でパラパラを踊りながら相談に乗る諸伏に降谷は頷く。上様サンバの一番が終わったタイミングの移動時間で、披露宴の招待客のテーブルへ大移動するフォーメーションにして、会場各所でパラパラ披露。上様役を頼んでいた鬼塚教官にも早く連絡せねば。
「おっ、パラパラ採用? 俺だけ上様サンバのリズムでパラパラ踊ってもよかったんだぜ?」
「やめろ、悪目立ちするな」
「班長とナタリーさん、喜んでくれるといいなぁ」
 近寄ってきた萩原がウィンクした。
 そうだ、これは班長の披露宴。班長と妻となるナタリーさんの笑顔が一番大事だ。
 完成度を高めることに頭が占められていた降谷ははっと気づくと、体育館の同期たちを見渡した。ちょうとパラパラの一番が終わったタイミングだった。
 命を張って職務を全うし、殉職一歩手前までいった同期がいるのに、こうして多くの者たちが集まって笑顔でいる奇跡。その事実に感謝しなくてはいけないと、ふっと肩の力を抜いた。
 後日行われた披露宴は、ちぢませが先導し同期たちが踊り、鬼塚教官が熱唱する上様サンバに花婿と花嫁が乱入して会場中が手拍子を送り、早着替えをしてパラパラに切り替わった瞬間、招待客、スタッフも全員パラパラを踊り出すという伝説の余興となり、会場となったホテルで長らく語り継がれることとなるのであった。
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