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好きなものを好きな分だけ

成人済腐。萩松/降新・安コ。ハピエン大好きなメリバ脳。字をもそもそ書きます。140字に要約する能力と検索避け文字列がしんどいため長文用にブログ作りました(一括metaタグ入れてあります)

『今宵も召喚します』

K学WEBオンリー「今宵は飲みます!!~2軒目!~」の企画、 #こよのみネットプリント2 (テーマ:ハロウィン)に参加したものです。
8P折本でネットワークプリントに登録していました。
印刷してくださった方、ありがとうございました!

・警察学校組わちゃわちゃ
・CP要素は入れないで書いたつもりですが、同脳内では萩松を取り扱っておりますのでアレルギー持ちの方はご注意ください




「コンビニ寄ってもいいか」
 そう問うたのは松田で、返事をする前に既に自動ドアの中にスルリと滑り込んでいた。
 そろそろ卒業も近づいてきた、暦上は秋の夜だ。飲みに出かけて酔い醒ましに少し遠回りをして寮に帰っている最中のことだ。
「萩、見ろよ塩大福風ロールケーキあるぜ!」
「……あまじょっぱいロールケーキ?」
「お、興味ある? 諸伏ちゃん。生地ももちもちしててクセになるぜ」
「でも塩大福はいつも食ってるし、今日は……」
「たっぷりパンプキンシュークリーム!」
 にかっと笑って、萩原と松田が声を揃えてシュークリームを手に取った。
「最近のハロウィン推しは早いな」
 班長がふたりの手元から店の商品を眺めて、同じシュークリームを持つ。
「班長も買うの? いいなぁ、なあゼロ、ラストふたつあるよ、オレたちも買おっか?」
「ん……そうだな、買おうか」
 そうして二十歳超え青年五人、飲み会の帰りにハロウィン仕様のシュークリームを買ってコンビニをあとにする。スキップもしそうな程上機嫌に、松田がふらりと公園に入っていき、にこにこ萩原が松田の隣に立つ。
「じゃあここで食べますか!」
 ふたりは顔を見合わせると個装を開け、右手にシュークリームを乗せて、ゆらゆらと左右に揺らし始めた。
「?」
 僕とヒロと班長が首を傾げる。萩原と松田の表情は笑顔だが至って真剣で、僕たちをからかっている様子は見られない。クエスチョンマークを飛ばす姿を見た萩原が、「ああ」と呟く。
「こうするとクリームが均等になるでしょ。柔らかいクリームだと偏りがちで、半分こするとき『平等じゃない!』って陣平ちゃん怒るからさ」
「そう言われてみれば、こういう食べ方があるのは聞いた事があるな……」
 ふむ、と頷いて僕も萩原と松田の真似をする。誰に分ける予定もないが、半分に割って食べるときクリームが均等のほうが食べやすいと読んだ覚えがある。五人中三人がシュークリームを揺らしている状況で、残された班長とヒロも追従するようにシュークリームを揺らし始めた。
 ぷふっと笑ったのはヒロだった。
「なんか、儀式みたい」
 シュークリームを見ながら集まった結果、公園の一角で五人が円を描いてシュークリームをゆらゆら揺らす様は確かに儀式めいていた。ハロウィンのイラストを見ていただけに、尚更思考がそっちに寄る。
「じゃあこうやって……」
「はい、降谷ちゃん召喚!」
 松田に引っ張られ、円の中央に移動したかと思ったら、萩原がおもしろそうに声を上げる。程よく酔ってるので声の通りも良い。僕を中央に置いてけらけらと四人がシュークリームを大きく揺らした。
「……トリックオアトリート?」
 はて、召喚される側の定型句がわからない。
「そこはもっとノらないと、ゼロ」
 クスクス笑うヒロに照れくささを覚えて、シュークリームを割って半分、ヒロの口に押し込んだ。

 * * *

「トリックオアトリート!」
 あれから数年。
 季節の定番商品となった、たっぷりパンプキンシュークリームをゆらゆら揺らし、公園でひとり、あの日を回顧する。誰も僕を囲ってくれないが、それはきっと僕が見えていないだけで、僕の周りには四人が召喚されているのだと信じている。
 まったく、この前、盆を迎えたばかりだというのに、今日はハロウィンのシュークリーム、来月になればハロウィン本番だ。思い出す行事が多くて忘れたくても忘れられない。
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・成人済腐
・萩松/降新・安コ
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