好きなものを好きな分だけ

公式のカードゲームの夏をテーマにした松田が素晴らしくて書きました！！
長掌筋素晴らしいな！！！

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公式通販
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商品情報
https://www.takaratomy.co.jp/products/conan-cardgame/product/ct-p06



「うっし！」
　あとはカバーを掛けるだけの段階まで進んで、松田は一度丸まっていた背中を伸ばした。
「終わった？」
「うお！」
　後ろから声を掛けられ振り向く松田は、今の今まで人がいたことに気づいていなかったらしい。パラソルの影の下に座ってソーダアイスをシャリシャリ齧っている萩原を見て、改めて周囲を確認する。砂浜に置かれた黄色のサーフボードを視認すると、くりくりの眼を萩原に向けた。
「萩も終わったのか？」
「うん、夏の海サイコー！　今水分補給も兼ねた休憩中。陣平ちゃんも波に乗ってみない？」
「そうだなぁ……」
　自身のいたところが日陰から外れていることに気づいたらしく、もぞもぞ尻だけで位置を替えながらドライバーを動かす。キュッキュッと強めにネジを回す右手首の長掌筋が浮き出て、力を込めているのがよくわかる。
「食う？」
「食う」
　あ、と萩原を見ずに口を開ける松田に萩原は嫌な顔をせずアイスを近づける。松田はアイスの位置を確認するために一度舐めたあと、シャクッと一口噛んで口の中へ運んだ。
　分解と組み立てに勤しむ松田を萩原は満足気に眺める。海に来てまで工具箱の出番があるとは恐れ入ったが、ラジオから振っても叩いても音が出なくて困っていた海の家の店主に声を掛けたのは萩原だ。「三分もあれば十分だ」とあっという間に直した松田は、すっかり分解熱に浮かされて海の家の電化製品を分解しては組み立てて楽しんでいる。建前は『ひとつ壊れ始めてたんだし他のも清掃を兼ねて調子を見てやる』だが本音は『四の五の言わずに分解させろ』だ。
　海に来てまでやることか、と思わないでもないが、しかし二十四時間三百六十五日ずっとこっちを見て欲しいとは萩原は思わない。お互い一人時間を楽しめる関係だし、何より充足しているのだ。朝、日焼け止めを塗ったし。昨晩、スキンケアしたし。長掌筋も撫でたし。なぞったし。舐めたし。アイス美味い。食べ終わったアイスの棒を持参したゴミ袋に捨てる。
「終わった！」
「お疲れちゃん」
　防水拡張スピーカーを持ち上げて海の家に向かおうとする松田に、萩原は飲みかけのスポーツドリンクを手渡す。
「そろそろ何か飯食わねぇ？　焼きイカか焼きとうもろこしか悩んでんだよな」
　ごきゅごきゅと勢いよく水分補給をした松田は悩む様子も見せずにニカッと笑う。
「両方！」
「いいねぇ！」
　夏の砂は熱い。昨晩、自身が整えた形のいい爪がビーチサンダルに映えていて、萩原は内心優越感に浸る。腹を満たしたあとはまた分解だろうか。波乗りイケメンっぷりを見せてもらえるだろうか。インドアもアウトドアもこなすイケメンな松田は「おっスイカ冷えてるってよ」と健康的に空腹っぷりをアピールしている。
「行こ！」
　右手に財布を掴んで、左手に松田の手首を掴む。長く浮き出る長掌筋を砂混じりに親指でなぞる。
　建前は人混みではぐれないように。本音はみんなに自慢したくてたまらない。