http://kashima.kurofuku.com/%E8%90%A9%E6%9D%BE/%E3%80%8E%E5%BD%BC%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%82%92%E4%BC%9D%E3%81%88%E3%81%9F%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%8F『彼は何を伝えたかった』
DS萩松。幼いのでCP色は薄め。転校してきたばかりであまり話したがらないタイプの松です。幼いのでCP色は薄め。タイトルはアレですけどハピエンです。
本予告を見てガーッと書きました。あの絵の詳細をご存知の方はそっとご教示ください。そもそも萩原実家の描写なのかどうかも私にはわからぬ!
テーマは「何を伝えたかったのか」です。予告が本予告になってもずっと囚われ続けています。映画本編で答えは出るんでしょうけど、わからないことのほうが人生多いと思ってます、そんな日常の一部です。
なお千は出てきません。
繋いでいた手がクンッと引っ張られ、動きが止まる。「ん?」と振り返れば陣平が足を止めていた。引っ張られたわけではなく、単純に動かなくなっただけである。陣平の見上げている先に、廊下に飾られている絵画があった。
「この絵、気になる?」
「……海?」
遊びに来るのは数回目。今まで絵なんか見向きもしなかったが、知らない人の家に遊びに来て緊張するのは当たり前で、少しは余裕が出てきたのかもしれない。研二は同じ目線で我が家の廊下に飾られた絵を見上げる。
「……海……かどうかは知らないんだけど……。えーっと、お客さんのお父さんのお兄さんが趣味で絵を描いてて、カタミワケで貰ったけど、飾るには大きいって話から、父さんが貰うことになったとかなんとか……」
「波に太陽がいっぱいある」
大きな青い曲線に赤い曲線が混ざる絵は、研二には何が描かれているかわからないままだ。『好きに観ればいい』と父親は笑っていたけれど。
じっと絵を見つめる横顔に、研二は笑いかける。
「陣平ちゃんには海に見えるんだね!」
「波に映る光に見える。太陽を赤く塗るのは日本。赤い線がいくつもあるのは波が高いから。海が荒れてるなら天気が悪くなきゃいけない。でもピカソもタメンテキな視点で絵を描いてる。時間もまざってる絵なのかもしれない」
滅多に話さないし笑わない、図書室でひとりで黙々と本を読む姿を見ている研二は、物知りな陣平が時々話す知的な内容を聞くのが好きだった。今まで話したことのないタイプの話題が出てきて飽きない。一方的な思考の出力に研二は耳を傍立てる。今日はよく喋ってくれて嬉しい。
「……カタミワケ……死んでるのか」
ここにきてようやく絵画から目線を外した。研二の目は見ない。廊下の向こうのリビングから顔を覗かせている母親に目で頷いて、繋いだ手をきゅっと握って歩き出すと、陣平は今度は抵抗することなくついてきた。
「絵ってすごいよねぇ、『俺にはこうやって海が見えた』って時代を超えて残せるんだもん」
「……海なのか?」
あれだけ力説しておいて疑問を投げかける陣平に研二は思わず吹き出す。
「わかんない!」
リビングに入るとふわりと甘い匂いが漂う。「ホットケーキでいい?」と母親が俺たちに既に用意してあるおやつの好き嫌いを尋ねる。陣平は狼狽えるだけで何も返事をしないので、研二は元気よくふたり分「うん、ありがと!」と頷いた。
「これ食べたら、また工場行こ!」
自動車に興味があるのか、パーツに興味があるのか、そこまではまだわからないが、陣平が工場を気に入っているのは知っている。小さくコクンと頷く陣平の反応が嬉しくて、ちょっと強めに手を引いた。
「……答え、聞きたかったな」
リビングの扉を閉める間際、呟かれた陣平の呟きに研二は「そうだねぇ」と見たこともない絵の作者に思いを馳せる。結局何が描かれているかはわからないけれど、作品としてずっと形に遺り、時々思いを巡らせてもらえるのは幸せなことなんじゃないかと。
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