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好きなものを好きな分だけ

成人済腐。萩松/降新・安コ。ハピエン大好きなメリバ脳。字をもそもそ書きます。140字に要約する能力と検索避け文字列がしんどいため長文用にブログ作りました(一括metaタグ入れてあります)

『猫ちゃんの好きなもの』

由敢。猫の日(大遅刻)、ハピエン。全年齢の女攻めです。いちゃいちゃさせました。
後天的にknに猫耳としっぽが生えてます。自認が猫です。
高がいます。




「諸伏警部!」
 勢いよく部屋に入ってきた由衣に、高明は「お待ちしてました」と立ち上がる。
「……ふむ……」
 ハアハアと息を切らせている由衣の肩には敢助がもたれかかっている。その頭には黒い猫耳。杖はついておらず、由衣に腰を支えられて立っていた。その下半身からは中途半端に短く曲がったしっぽが由衣の脚に巻きついている。猫の習性からすると由衣に対して友好的な感情を抱いているようだ。服装は出動時のスーツではなく、動きやすそうなジャージである。明らかに常とは違う敢助の様子に、ふむと頷いた。
「……話は本当だったようですね。猫になる煙を吸ったんですって? ふふ、可愛い猫ちゃんですね」
「さすが諸伏警部。理解が早くて助かるわ……」
 敢助と由衣が朝から駆り出された事件現場。追い詰めた犯人が逃げようとした際、発煙筒を投げつけてきた。ただの目くらましぐらいにしか捉えていなかったピンクの煙は、どんな原理か人間を動物に変えてしまう代物だった。詳細はまだ下りて来ないが、どうやら初めての事例ではないらしく、病院への搬送や解毒剤投与など手際はよかったそうだ。注意喚起のためにも情報は欲しかったところだが、人間が動物になるなど俄に信じられないし、情報が出回らないのも無理はない。だが今回敢助をはじめとする警察官を巻き込んだ事件に発展したことと、犯人の確保により、謎の煙は公の資料に残るだろう。
「おかえりなさい、敢助君。無事……といっていいのかわかりませんが、帰って来てくれて何よりです。私の事はわかりますか?」
「……」
 敢助は目の前の高明をじろじろ見て、その奥の部屋から好奇の目で覗いてくる同僚たちをじろりじろりと見渡す。ぺち、ぺち、としっぽが揺れた。あまりご機嫌麗しくないようだ。
『聞いてくださいよ諸伏警部!』
 別の現場から帰ってきた瞬間、敢助が病院へ運ばれたと聞いたときは青くなったが、由衣がぷんぷん怒りながら電話を掛けてきたので、緊急性は低いと判断していた。
『入院できるのはいっぱい煙を吸っちゃって、敢ちゃんより重症な人……つまりまるっと猫になっちゃった人が優先ですって。敢ちゃんは吸った煙の量も少ないし、解毒剤は投与してるから一晩で治るはず、だって! 無責任だと思わない? 急変したらどうするつもりなんだろ! 私怒ってるのよ、ねぇ、コウくん!』
 刑事から幼馴染へ口調がだんだん変わってくる様子を微笑ましいと言ったら怒るだろうか。猫耳としっぽを生やした敢助がくっついて離れない由衣を見て、高明は内心笑う。
 警戒混じりに辺りの様子を窺っていた敢助だが、由衣に溜息混じりに髪を撫でられて、ふっと意識がそちらに向く。ふすふすと由衣の首元の匂いを嗅いで、自らの頭をぐりぐり擦り付けた。
「か、敢ちゃん、待って、やるなとは言わないから待って、お願いだから脚悪いの自覚して、またバランス崩しちゃうよ、倒れちゃうよ、敢ちゃんが痛い思いするの嫌だなぁ、あああ、わかっ、わかったから、でもねごめんね全体重かけられるとさすがに支えきれないから!」
「おやおや」
 大男に体重をかけられて、ふおおおと倒れないように必死に踏ん張る美女をおもしろおかしく高明は助太刀する。現役の刑事の由衣は同年代の女性より圧倒的に力はあるが、その技の基本は攻撃を仕掛けてくる相手を確保するための体術だ。組み伏せることは容易だが、今の相手は敢助である。しかも半端に猫化した人間。力任せにぐりんぐりん擦り寄る敢助に、由衣が対処に困るのも当然だった。
「とりあえずこちらへ。今の敢助君は意思の疎通も難しいのでしょうか?」
 押されている由衣を支えながら、由衣越しに敢助に微笑む。まるで自認がパピーの大型犬だ。いや猫だが。敢助を引き寄せて由衣の負担を減らす手を使わなかったのは、猫の本能が強めに出ていると踏んだからだ。懐いている由衣から引き剥がして逃げ出されては困る。せっかく逃げ出さずに特定の人間と行動を共に出来ているのだから、それを利用するに越したことはない。逃げようにも脚のことがあるので素早い動きはできないだろうが、怪我をさせないように必死な由衣の思いを蔑ろにしたくなかった。
 敢助は介入してきた高明を一瞥し、ぴるぴる猫耳を痙攣させる。敢助はおもしろくなさそうな表情を浮かべるが、「ありがとうございます、諸伏警部……敢ちゃん、こっち」と由衣に顎の下を撫でられると、またべったり由衣にもたれかかって、高明に促された由衣に合わせて、ひょこひょこと片脚を引きずりながら移動し始めた。
 案内される最中、由衣が先程の高明の疑問に答える。
「自分が『敢助』という名前であることは理解してますし、私が誰なのかも多分わかってます。今の様子だと諸伏警部のこともわかってそう、警戒心剥き出しだった病院とは全然違うから。大人の猫レベルの知能はあるみたいで、大体のことは通じるんですけど、言うこと聞いてくれないこともあります……。正直……、本気でわかってないのか、わかってるのに無視してるのか、判断が難しくて」
「猫ちゃんですからねぇ」
 仮眠室のドアを開けると、お礼を言いながら由衣が入室する。「敢ちゃん、座るよ」と左脚を意識しながら、一段高くなっている畳にゆっくり座らせる。靴を脱がす由衣を興味深そうにじっと見つめている敢助のしっぽが時々小さく揺れている。
 軽症を理由に入院をやんわり断られて自宅待機を告げられた敢助の部下の由衣が下した決断は、『敢助と一緒に署に泊まる』ことであった。『私もおじさんもおばさんも、何かあっても対処できない! 署で急変したほうが助けを呼びやすい!』とのこと。同じ現場にいたのに偶然マスクをしていたことで例の煙を吸う量が少なく、自身に何も被害がなかった点で責任を感じているようだった。犯人確保に尽力し、猫化した被害者たちの確保にも奔走した功労者であってもだ。
 靴を脱がせ終わった敢助の脚を畳に上げ、自身も腰を落ち着かせてようやく一息ついたのか、由衣が大きな溜息をついた。
「その服と杖はどうしたんです? 四つん這いで歩こうとしたんですか?」
「杖は移動に使った私の車です。着てたスーツも。このジャージは元々私の車に積んであったやつです、いつ事件で泊まったり汚れるかわからないから自分のを積んでて、どうせなら敢ちゃんもって提案したら渋い顔で納得してくれたやつ。役に立ってよかったわ」
 敢助はきょろきょろと簡素な仕切りと壁に囲まれた寝るだけの空間の様子を見ていた。他人より大柄な分、足を伸ばして寝られないことにぶつくさ文句を言っていたこともあるが、猫の感覚ならこの狭い空間はきっとお気に召すだろう。
 由衣から連絡を受けた高明は出来るだけ仮眠室を使わないよう根回しし、軽く掃除をして簡易ながら飲食物も用意しておいた。中途半端に猫化した敢助が何を食べられるのかわからないので、とりあえずササミと鰹節、マグロの刺身を買って冷蔵庫にしまっておいた。ササミは署の電子レンジで火を通せばいいし、鰹節や刺身はそのまま食べられる。米や野菜は人間に戻ってから摂取すればいいと開き直って完璧な食事は目指さなかった。
「四つん這いで歩こうとはしたことなくて、基本的な体の動かし方は人間のままみたいです。でも脚の怪我が完治してないのわかってないみたいで、杖使わないで歩こうとしちゃって。うまく動かないし、無理すると痛いからか走り出すことはしなくなったんだけど、今日だけで何回も転んじゃって。猫の知能になった混乱で、怪我をしていない頃の記憶になってるんじゃないかって先生は言ってたわ」
「なるほど……」
 雪崩に遭い、左目と左脚を負傷して、まだ一年経っていない。脳に刻まれるには最近の出来事なのかもしれない。
「……私またたびの匂いでもしてるのかしら?」
 座る由衣に近づいて、すりり、と腕に頭を擦り付ける敢助に由衣が独り言を漏らす。撫でられ、嬉しそうに敢助はぺろりと由衣の指先を舐める。「ザラザラだぁ」と由衣が楽しそうに評する。
「またたびだったらもっと激しく酔っ払ったようになりますよ。擦り寄るのは、猫ちゃんだから、というよりは猫の敢助君だからそういう行動になるんでしょう」
 部分的にハサミで切り抜かれたジャージから、しっぽがピンと伸びている。上がるしっぽは好意を表す。由衣への好意は人間の敢助も隠しきれていないが、猫の敢助は全く隠そうとしない。猫は天邪鬼ともいわれるが、猫化した敢助は由衣に対して大変オープンになるようだ。
「可愛い」
 段々由衣の表情が緩んできた。事件現場、病院、車の運転とずっと気を張っていたのだろう。猫耳やしっぽの愛らしさに心を揺らす余裕など持てなかったに違いない。
 由衣が慎重に猫耳の付け根を撫でる。気持ちよさそうに数回撫でられ、敢助は由衣へ鳴き声を上げるような仕草をした。声は出ていなかった。
「……今のってもしかして『サイレントニャー』?」
「恐らく……」
 絶大な好意を表すという、人間には聞こえない高周波の鳴き声。単純に人間の声帯で猫の鳴き声を出せなかった可能性もあるが、脚を崩して両手を畳について、由衣を見つめる隻眼の眼差しは好意以外の何者でもない。
「おいで」
 とろけるような甘い声に、敢助は嬉しそうに由衣に擦り寄った。ハグをされながら上半身を撫でられる。
「こんなに素直な敢ちゃんを職場で見られるなんて……猫ちゃん最高……」
 由衣は敢助の匂いを嗅いで幸せそうに呟く。猫耳の中に鼻を入れて匂いを嗅がれても敢助は嫌がらない。くすぐったいのかくすくす肩を震わせるだけだ。「敢ちゃん」という囁きに、グルルと人間の声帯からは出ない音で敢助が返事をする。
「可愛いお耳……もっとさわりたいんだけど、いい? 猫の耳はさわられるの嫌かしら」
 問われ、敢助は由衣を見て小首を傾げる。ん、とでも言いたそうに猫耳を由衣に差し出した。『言うことを聞かないこともある』とは何だったのか。普通の猫よりよっぽど言うことを聞く。由衣が思っているより遥かに敢助の由衣への許容度は高いのだ。指でさわるどころか、かぷかぷと猫耳を甘噛みされ、もう片耳を指で揉まれている敢助は嬉しそうに全身を震わせている。ツンツンと鼻で由衣の頬を突くと、「可愛いねぇ」と鼻も甘噛みされる。ゴロゴロ……ゴロゴロ……と地響きのような音が響き出した。由衣は敢助を抱き込んで畳に転がる。
「そう、喉鳴らせるの。今まで緊張してた?」
 敢助の上半身に乗り上げて、喉元をこしょこしょとくすぐり由衣は甘く問いかける。由衣の指の動きに目を細め、敢助は大きな体を少々扱いづらそうにグググと伸ばす。もっと撫でてと体で伝える敢助に由衣は全力で応える。どこまで猫の声帯に変化しているのかわからないが、喉からゴロゴロと鳴る音はネコ科特有の好意やリラックス、ストレスを表すシグナルだ。体格が大きいため低く聞こえるが、どう見てもストレス反応ではないだろう。喉鳴らしは子猫が母猫に甘えるのが主たるコミュニケーションだが、はてさて敢助にとって由衣は何なのか。フッと笑って高明は体の向きを変えた。
「さて、おなかすいたでしょう。おにぎりとか買ってあるので持ってきます。敢助君にはササミやマグロがありますからね」
「わあ、助かります! あとで払うのでレシート捨てないでくださいね」
 退室しようとする高明へお礼を言う由衣に、敢助が不満そうに頭を上げる。両手で由衣の頭を引き寄せると、躊躇いなく自らの唇と由衣の唇を合わせた。
「!」
 意識は猫だが、体の作りや動かし方は人間だ。好意の表し方がミックスされた結果、人前ではやらないような行為も直情的に行われるようだ。急なキスに驚きを隠せないでいた由衣だが、ぐっと体勢を整えて改めて由衣からもキスを贈り返した。
「敢ちゃん、ちゅー上手。私も敢ちゃんとちゅーするの好き。敢ちゃんも好き? ふふ、お揃いね!」
 敢助の拗ねたキスを上書きするように、由衣は愛を囁きながら何度も何度もバードキスを繰り返し、敢助はゴロゴロと上機嫌に喉を鳴らす。まだ高明は退室していないがお構いなしだった。
「ねえ、お口あけて? 敢ちゃんの可愛いべろと八重歯、私に見せて?」
 困ったように敢助の眉が下がる。猫の防衛本能と人間の理性による羞恥、両方が抵抗している。鳴り止んでしまった喉の音を惜しむかのように由衣が喉仏をはむはむと唇で優しく食んだ。
「だめ?」
 果たして敢助の口は恥じらいながら開かれて。
 さっきから『飼い主と愛猫』のやりとりから違うものに変わっていることを察している高明は、穏やかに微笑みながら仮眠室をあとにする。
 部屋の外では、ねこじゃらしであったり猫用高級おやつであったり、各々猫グッズを手に持ち、猫化した敢助を相手にしたくてうずうずしている同僚たちが集っていた。素早く、かつ自然に扉を閉める。彼らにはおおよそ見せられない室内にも聞こえるように、「おやまあ皆さんお揃いで」と大きく驚いてみせる。食事を持ってくるまでに睦言は終わらせるよう、扉一枚隔てた先の由衣へメッセージを込めて。
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