http://kashima.kurofuku.com/%E7%94%B1%E6%95%A2%E9%AB%98/%E6%95%A2%E3%82%92%E5%B1%B1%E6%A2%A8%E3%81%AE%E7%97%85%E9%99%A2%E3%81%A7%E8%A6%8B%E3%81%A4%E3%81%91%E3%81%9F%E9%AB%98%E3%80%81%E5%A0%B1%E5%91%8A%E3%82%92%E5%8F%97%E3%81%91%E3%82%8B%E7%94%B1%E3%81%AE%E5%B0%8F%E3%83%8D%E3%82%BF敢を山梨の病院で見つけた高、報告を受ける由の小ネタ
敢助を山梨の病院で見つけた高明、真っ先に由衣に連絡しようとするもアドレス帳に表示される『虎田由衣』に指が止まり、長い長い思案後、正規の敢助の緊急連絡先である大和実家に連絡したのかな。その後長野県警に一報入れてしこたま怒られてから由衣に電話かな…
由衣個人携帯に繋がらなくて虎田家に連絡を入れたら義郎さんに、
「由衣、諸伏さんという方から電話だよ」
と取り継がれて、幼馴染ではなくK察の立場で報告したのかもしれない……。
「夜分遅くにすみません」
「お疲れ様です、諸伏警部。ご用件は?」
「大和警部が見つかりました」
「……ご愁傷さまでございます。わざわざご連絡頂きありがとうございます、葬儀には元部下ではありますが退職した身ですので一般で参列を」
「生きています」
「……」
「生きています。雪崩に遭い、山梨県の病院で入院中です」
「……山梨……」
「入院先は、」
「ご報告ありがとうございました」
仕事モードのままの硬い声で切られた電話に項垂れる高明を見たい。
間違ったことはしていない。
敢助の死へ涙を流した女性へ、敢助が無事だったことを伝えるのは間違いではない。
たとえ結婚していても。
間違ったことはしていない。正解ではなかったかもしれないが。
~由衣のターン~
泣いてはいけない。動揺してはいけない。
ただの同僚相手に普通は泣きはしない、動揺もしない。
私は虎田義郎の妻。虎田虎田虎田。
私は虎田由衣。
寝室に戻り、「どなたか亡くなられたのかい?」と聞かれて「……いえ。元、となりますが、長らく行方知れずだった上司が生きて見つかったという話でした」と淡々と義郎さんに答える由衣さんが見たい。
「そう、それはよかった。山梨で? 遠いね」
「申し訳ありません、うるさかったでしょうか」
「いや、地獄耳なだけさ」
「申し訳ありません、嫁いだ身で勤務時の話をしてしまって」
「そんなことはない。由衣の警察時代の話、たくさん聞かせてほしい」
「ご冗談を。公僕の女を娶っていただいた恩を仇で返す真似はいたしません。夜遅くに電話お借りして申し訳ありませんでした」
「ああ、もう、そんなことで頭下げないでいいから、ほら頭上げて。……ね、借りるも何もここは由衣の家なんだから好きに使えばいいんだよ。昔の同僚と話してもいいし、家に友達も呼んでもいい。周りがやいのやいの言うのを止められない僕が言えた立場ではないが」
「いえ。もう電話はしないようあとで伝えておきます。虎田家に入った私には関係のない話なので」
「由衣」
「ふふ、義郎さんに気にかけていただいて私は幸せ者ですね……さあ、もう休みましょう」
そして消える電気。薄ら灯される豆電球のもと、蠢くふたつの影。衣擦れの音。新婚夫婦の夜は更けていく。
虎田家では絶対『敢ちゃん』の名を出さない人妻由衣さんが見たい。
義郎さんの口調は捏造。「由衣さん」呼びでもいいな。
加島はハピエン好きなメリバ脳です。